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昼寝日和

日記

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小野くんの誕生日

です。
じめじめ蒸し暑く、クーラーに凍える今日この頃。普通に夏風邪なんじゃとか疑っても信じることは決してしないよう心がけています(ただし喉とか頭痛い時は素直に薬に頼ることを覚えた)。
皆様いかがお過ごしですか。

ピクシブにもUPしたのですが、ブログのネタがないのでこちらにも載せておこっかなっていう軽いノリで百夜通い番外編SSを載せさせていただきます。
イベントの時の無料配布より長文になっててSSってなんだっけ状態です。そして、ブログが久々過ぎて使い方忘れたアレレー?
ちなみに、紫陽花見に行ったのも浅草の七夕祭に行ったのも私です。坊さんがウェイターしてるお寺のカフェのパンケーキも、スゲー並んで食べた芋のかき氷美味しかったです。

本編である百夜通いの下巻本文は鋭意執筆中です。
イベントのサークル参加用サークルカットも、上巻に引き続き下巻のカバーと表紙を担当していただく相澤さんが頑張ってくれています。




 梅雨らしく曇り空が続き、時々雷もゴロゴロ鳴りながら雨が降ったり止んだりしてる。そろそろ、今年も半分が終わる。
 毎年のことながら、この時期は テストや課題に追われて落ち着かない。普段からこまめに勉強しているつもりでも、〆切や本番前に余裕でいられた試しがない。それでも、草町が一年の頃から単位を取るために協力してくれたから、今年は去年までよりちょっとだけ楽だ。あくまでちょっとだけ。
 そんなギリギリなオレとは違って、草町は慌てず騒がず淡々と課題をこなす。本格的なテスト対策期間が始まる前とはいえ、一人でフラッと小旅行しちゃうくらいには余裕だ。草町が都内にすらいなかったことを、オレはファミレスで同じ科の先輩に課題の相談にのってもらってる時に知った。
 草町が出不精なのを知ってたし、まさか恋人のオレに一言もなく一人で出かけるとは思いもしなかったから地味にショックが大きかった。帰りの電車の中で、もしかしたら初めて起動したカメラ機能で撮ったアジサイを送ってくれたのは嬉しかったけど。
 ファミレスを出る直前に気付いたそのメールには件名も本文もなくて、どうしたんだろうと思って電話をかけた。
「今、電車の中だから急用でないなら折り返す」
「ハイ」
 通話終了。正直泣きそうだった。ファミレスだったし、先輩いたからガマンしたけど。
 結局、そのあと草町は律儀に電話してくれたけど、声が眠そうでかわい…じゃない、疲れてるのが丸わかりだったから翌日会いに行くことにした。昼過ぎにアパートに行くと、疲れが抜けきっていない顔の草町が出迎えてくれた。
「大丈夫?」
「人酔いを引きずってるだけだ」
 人酔いって、二日酔いするのか。疲れが抜けない感じは覚えがないわけじゃないけど。
「珍しいね、草町が一人で遠出するの」
「雨が降ってたから、少しは人が少ないんじゃないかと思ったんだが……読みが甘かったな」
 お茶請けに出してもらったサブレーをパクつきながら、草町の顔を眺める。疲れてるけど、ちょっとだけ楽しそうに目元が緩んでる。
「楽しかったんだ」
「まあ、思ってたよりは。来年は一緒に行けたらいいな」
「え」
 予想外な提案に摘まんでたサブレーの欠片を落とした。草町がデートのお誘い?マジで?
「無理にとは言わないが」
「むっ、無理じゃない!!行く行く!一緒に行く!」
「そうか。……楽しみだな」
 嬉しそうに微笑んだ草町を真正面から見ちゃって、一瞬で顔が真っ赤になったのが自分でわかる。衝動を抑えられずに、震える手を伸ばした。
「……抱きしめても、イイデスカ」
「ん?ああ」
 両腕を広げて迎えてくれた大好きな人を抱きしめる。
 好きって伝えたばかりで、振り向いてほしかっただけの一年前だったら考えられなかった。半年前だったら、されるがままでオレが満足して離れるまでじっとしてた。今は背中に手がまわって、オレの肩に頭を乗せて擦り寄ってきてくれる。
 苦しいくらい好きで息の仕方を忘れそうになるけど、意識して吐いて吸ってを繰り返す。
「草町、変わったね」
「そうか?」
「うん。……あーしあわせ」
 春休みに一度短くなったけど、また伸びて括れるくらいになった草町のまっ黒で柔らかい髪に頬を寄せる。
 ふと、肩口で草町が微笑む気配がする。腕に少し力がこもった。
「うん」
 草町も、しあわせって思ってくれてる。こんなに嬉しいことってあるんだ。
 体が熱くなって、顔から赤がひかない。でも草町にはみっともない所をたくさん見られてるから気にならない。開き直れるようになったとこは、オレの成長したとこだと思う。情けない気もするけど、草町が離れてかない限りはこれでいい。

 ほんのちょっと体を離して、頬に触れれば顔が近づく。キスする直前、至近距離で閉じられる寸前の草町の目が好きだ。初めて逢った時と変わらない鮮やかな黒に、きっとオレしか知らない色が混ざる。
 触れて、食んで、子どもって言うほど幼くないけど、大人って言えるほどでもないキスは心地よくて、しあわせで、満たされる。こういう触れ方が出来るようになったのも、変わったことの一つだ。二人で、気持ちくてしあわせな優しい触れ方を探してくのが楽しい。
「……夕飯は?」
「ん、食べてく」
 このやり取りを、何度しただろう。これからもきっと、何度だって。



 コンビニや商店街で笹の葉と紙の飾りと短冊が揺れる頃、一人でふらっと出かけてみた。言い訳は、課題の息抜き。
 その帰りの日が落ちきらない明るい夕方、がさがさ音を立てるビニール袋をなるべく揺らさないように持って階段を上る。メールの返信はなかったけど、気付いただろうか。
 部屋の前に着いて、両手で持っていた袋を片手に持ち変えようと視線を落としたら鍵が開く音がした。間もなくドアが開いて、草町がひょこっと顔を出す。
「今日、来るって言ってたか?」
 草町が不思議そうに見上げてくる。スクーターの音で気付いて出てきてくれたんだろう。
「ううん、言ってない。お土産あるんだけど、上がっていい?」
「ああ」
 お茶を出してくれている草町の後ろを通って居間へ入る。ちゃぶ台に積まれている本を端へ寄せてがさがさと土産を広げた。
「夕飯食べちゃった?」
「いや、まだ」
「よかった。一緒に食べよ」
「……何処に行って来たんだ?」
 二人分のコップを持った草町が、ちゃぶ台に広がる縁日の戦利品に首をかしげた。焼きそば、イカ焼き、名前は忘れたけどカレー屋で売ってた持ち歩きやすい形の何か、ワッフルにポン菓子まである。
「七夕祭り行って来たんだ。結構賑わってたよ。勉強の息抜きのつもりで行ったんだけど、ラムネ飲んでたらやっぱり草町も誘えばよかったなーってなっちゃって」
 草町が人混み苦手なのを知っていたし地味に遠かったから一人で行ったけど、隣にいたらって考えずにはいられなかった。せめて屋台料理を一緒にって、その場で食べるのは我慢して土産になりそうなものだけ買ってさっさと帰ってきた。
「スイカとかもあったけど、無事に持って帰る自信なかったから諦めたんだ。かき氷とかうまそーでさ、草町だったら何味だろーとか、思ったよりデカかったから半分こかなーとか、色々考えてたらやっぱり会いたくなっちゃって。帰りの電車でメール送ったけど、見てない?」
「メール……」
 草町はコップを机に置くと、ラックへ手を伸ばす。定位置にあった携帯を両手で持ってゆっくり操作するのを後ろから眺めてたら、ピタリと動きが止まった。
「どう?」
「きれいだな」
 後ろから抱きついて、肩に顎を乗せて携帯を覗き込む。まっすぐ伸びる商店街の道、見える先いっぱいにカラフルな吹流しと提灯が並んでる。晴れてたらもっと壮観だったかもしれないけど、曇っててもキレイだったし、涼しかったからプラマイゼロだ。
「さすが商店街って感じだったよ。格安で食器とか料理の道具とか売ってたし。子どもたちがさ、すげーの。江戸っ子っていうか、あきんどっていうか……商売慣れしてる感じ」
 その商売上手な小学生に勧められてワッフルも買ってしまった。祭っぽくはないけど、美味ければ文句はない。
「へえ……」
 写真をじっと見てて反応は薄いけど、ちゃんと聞いてくれてる。オレが話す単語に反応して、好奇心で目がきらきらしてかわいかった。本物を見たら、どんな顔をしただろう。
「……誘ったらよかったかな」
 見れたかもしれない草町の知らない顔を想像したら、ちょっともったいないことをした気分になる。腕の中で大人しくしている草町の首筋に擦りよった。
「僕はいいよ。こういう所は、人がたくさんいるだろう。僕は田舎の祖父の村でやってるくらい小規模な祭で充分。……でも」
 顔を上げられずにいたら、草町が頭を撫でてくれた。盗み見れば、まだ携帯の小さな画面を眺めてる。
「写真、嬉しい。ありがとう」
 微笑みながらそんなこと言われたら、もうお手上げだ。草町が体力的に厳しいとこならオレが何処でも行って、いくらでも写真撮っていくらでも話す。草町のこんな顔見られるならカメラの勉強始めたっていい。
「オレ、も……こないだのアジサイ、嬉しかった。ありがと」
 ぎゅうぎゅう抱きしめて言ったら視線を感じて、顔を上げたら草町が少し驚いた顔してた。もう一年以上好きって言ってるのに、まだまだオレがどんだけ好きなのかわかってないらしい。オレの行動で草町が嬉しいって思うことの大半はオレが草町にされてもだいたい嬉しいし、舞い上がり方は絶対オレのがひどい。
 ふと、商店街にいくつもあった枯れかけの笹に、たくさんの願い事が吊るしてあったのを思い出す。子どもたちがはしゃいでいる中に混ざれなかったし、神頼みしたいような願い事もなかったから書かなかったけど。

「短冊、草町は何て書く?」
「……無病息災?」
「初詣ん時も似たようなこと言ってなかったっけ」
「初詣の時は世界平和だった。神頼みするなら自分じゃどうにもならないことを頼む」
「んー……じゃあ、オレは世界征服かな。草町の世界を平和にします!」
「具体性が感じられない征服宣言だな。出直してこい」
「ハハ、手厳しー!」
 笑いあって定位置に着く。いただきますと手を合わせる日々を、神頼みして手に入れるつもりはない。オレたちが頑張って、自分たちの意志で続けていくものだから。



 テスト前の三連休初日。なじみの喫茶店でチーズケーキをパクつきながら参考書と格闘するオレの前で、草町がさらさらとレポートの下書きで原稿用紙を埋めていく。
「……終わりそう?帰ったら打ち込みしちゃう?」
「……ああ」
 あ、ダメなヤツだこれ。集中しちゃって終わるまでろくな会話にならない。邪魔したいわけじゃないから、オレは大人しく構ってもらえるようになるまで参考書と戦い続ける。
 小さな覚悟を決めた時、マスターが二人分のコーヒーと小皿に盛ったクッキーを持ってきた。
「どうぞ」

「え?頼んでないですよね?」
「サービスです。お二人でどうぞ」
 飲み終えていたコーヒーカップを下げるマスターの横顔はすましたものだけど、チラリと視線を寄越して大変ですね、とばかりにうっすら笑われたら確信犯なのはオレにもわかる。
「あー……よく覚えてますね。こういうサービスされたら女性客メロメロでしょ」
「ケーキをテイクアウトする男子学生は珍しいですから」
 去年の今日も、ここでチーズケーキを買った。うっかり誕生日だと言ったら、クッキーをおまけしてもらったのは懐かしい思い出だ。おめでとうございます、と小声で言って去っていくマスターの粋なはからいはありがたくも小恥ずかしい。正確にオレの誕生日を覚えていたわけではないだろうけど、オレがここでチーズケーキを頼むのは年に二、三回あるかないかだからこの時期に頼むなら、と思ったのかもしれない。
 接客業やってる人の観察眼はスゲーなーとありがたくサービスのコーヒーに口をつけると、草町の目がクッキーに釘付けになっていた。気付かないかと思ったのに。
「……小野」
「ん?」
「今日、何日だ」
「えーと、十九日、だね」
「そうか。覚えた」
 そう言うと、草町はクッキーを一枚摘まんでコーヒーを飲んでまたレポートの作業に戻った。あとどのくらいかかるかなーと草町のつむじの辺りを眺めながら、オレもクッキーをパクつく。
 参考書をぺらぺらめくりながら、クッキーが半分に減った頃、草町が静かに席を立った。トイレかと思ったけど、マスターと少し喋っただけで戻ってくる。どしたの?と視線で問いかけても、なんでも、とはぐらかされて草町は三度レポートに夢中になってしまった。
 パタ、と鉛筆を置く音に顔を上げたら、草町が伸びをしていた。レポートが終わったのかと聞こうとしたら、一瞬早くマスターの声がかかる。草町は返事をするとさっさと帰り支度を始めた。え、何、帰んの?

「お勘定お願いします。まとめて」
「はい」
「え?いーよ、自分で払うよ」
 慌ててオレも荷物をまとめるけど、残ったクッキーを口に詰めてたら間に合わずに草町に奢られてしまった。レジ前で草町の隣に並んだら、見覚えのある紙袋を渡される。あったかい。中身はオレらの好物だろう。さっき話してたのコレか。
「夕飯。おかずが欲しかったらコンビニかスーパー寄る」
「え、うん、別にいいけど」
「ごちそうさまでした」
「またのお越しをお待ちしております」
「ちょ、置いてかないで!?マスターごちそうさまでした!」
 店を出たら曇ってた空からはパラパラ小雨が降り出していたけど、草町は傘もささずに帰り道を歩き始めてる。焦ってスクーターに鍵を差し込もうとしたら一回落とした。
 早足でスクーターを押して追いつくと、草町は難しい顔して足下を睨みながら歩いていた。
「悪いが、何も用意がない」
「色々奢ってもらっちゃったし、去年と同じでもいいけど」
 何もいらないって意地張るのももったいないかなって控えめに提案したら睨まれてしまった。立ち止まって考え始めた草町を追い抜いてしまって、オレも立ち止まる。今は小雨だけど、遠くで雷も鳴ってるし早く帰んないと本格的に降り出すかもしれない。
「草町、とにかく帰」
「あ」
 唐突に何かを思いついたらしい草町が、オレを無視してポケットを漁り始めた。あの、地味に傷つくからシカトやめてください。
「ん。誕生日、おめでとう」
「え」
 草町が差出したのは、鍵だった。今年の誕生日に弟くんにもらったらしいストラップが一つだけついたそれは、草町のアパートの部屋の鍵。
 ストラップの経緯を思い出したのか、草町はちょっと待って、と言ってストラップを外してからもう一度オレにそれを差出す。
「……いいの?」
「あったら便利だろう?うちにスペアあるから。要らないなら別の」
「い、いる!」
 両手で受け取ろうと手を放して、スクーターが倒れそうになって慌てて支える。スタンドで立たせてから、改めて誕生日プレゼントを受け取った。
 ホントにもらっていいのか。家の鍵だぞ。確かにあったら便利なくらい入り浸ってるけども。ヤルことヤっといてなんだけど、警戒心とかないの?嬉しいんだけど心配もあって頭ん中ぐるぐるする。
「……嬉しい?」
「え……うん。なんか、かんどーするレベルで」
 首かしげて上目遣いに聞かれた。ふわふわろくに働かない頭のまま答えたら、オレのお花畑な思考回路よりふわって笑うから頭も体もホントに動くのを止めた。死ぬ。いつか絶対、オレは草町に殺される。アレだ、ちょっと前にたまたま見た朝ドラでやってたぱるぴてーしょんてヤツで人は死ねる。
 魂が抜けかけたオレの意識を、また先に歩き始めた草町の声がつなぎ止めた。声っていうか、コレ……鼻歌?聞いてたかったけど、それより確かめたいことがあった。
「くさまち……それ」
「?なんだ?」
「その、曲」
「え、声出てたか」
 振り返って応えた草町は、自分の鼻歌を意識してなかったらしく少し恥ずかしそうに視線を前に戻して、ちょっと早足で歩き出す。両手で持ってた鍵をしっかりポケットに仕舞い込んでからスクーターを押して小走りに追いつくと、小雨で少し湿った髪の間から覗く草町の耳が少し赤くなっててかわいかった。
「こないだ、紫陽花を見に行っただろう」
「うん」
「その時、小野が置いてった音楽聞ける奴、借りた」
「あ、だから充電減ってたんだ」
「ごめん」
「や、それは全然いいけど……気に入った?」
「うん」
 
J–POPもインストもじいさんや父さんに教えてもらったフランスの曲も、オレの好きな曲しか入ってないアレを鼻歌歌っちゃうくらい気に入ってくれてたのか。その事実も、プレゼントを喜んだオレを見て浮かれちゃったことも、草町の全部が愛しい。
「早く帰ろう。今すぐ帰ろう」
「え、おい、どうした急に」
 もうほとんど見えている草町のアパートへ急ぐ。早く帰って抱きしめたい。キスしたい。ありがとうって、好きだって伝えたい。
 さっきもらった部屋の鍵でドアを開けて、先に部屋に入って抱きしめておかえりって言おう。今日はオレの誕生日だから、そのくらいのワガママはしょうがないなって笑って許して?

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